ティーコンシェルジュ林素真子の
「いきなティーコラム」
column02あなたの生活を豊かにする「急須で淹れる1杯のお茶」
昨今、日本の2/3の世帯には急須がないそうです。
ペットボトルのお茶しか知らない方にこそ、急須で淹れるお茶の美味しさを
知って、家族で囲むお茶の時間を楽しんでほしいと思います。
ペットボトルのお茶しか知らない世代
知人から聞いた話です。ある新卒社員にお茶を頼んだら、その子は急須に茶葉を入れたところに、なんと蛇口から水道水をそのまま入れたそうです。家ではペットボトルのお茶しか飲んだことがなく、お茶はペットボトルからコップに注ぐものだったとか。また娘が大学生だったころ、「電気ポットの使い方を知らない同級生がいた!」と驚いていました。
驚くことに今や急須は、日本の家庭の3世帯のうち1世帯にしかないそうです。つまり2/3の家庭から急須がなくなっていて、若い世代はお茶の淹れ方を知らない子がほとんどのようです。
「へそで茶を沸かす」「茶柱が立つ」など、「茶」にまつわることわざがたくさんあるのは、日本人の生活に「茶」が欠かせないものだったからです。日本語の「茶」には、その場の雰囲気や人間関係を表す言葉が多いですが、こういった言葉が死語になってしまう日も近いのかもしれません。
お茶に適したお湯は何度か?という以前に、そもそも急須やポット、茶葉の無い家庭があるのかというのは、お茶どころ静岡で生まれ育ち、茶業を営む親族がいる私としては、本当に驚きでした。
やかんや電気ポットを使ったことがないというのは、そもそも家でお茶を淹れて飲む機会がなかったということでしょう。
ペットボトルのお茶を飲むのにわざわざ家族を呼ぶことはあまりないでしょうから、家族団らんの時間が少なくなるのかもしれません。核家族化が進み、共働きの家庭が増える現代の日本では、家族そろって食事をしたり、お茶を飲むことがない人たちが増えているのだと実感し、このままでは家族という集団が、ただの同居人に変わってしまうのではないかと危機感すら感じます。
母親は毎日子どもの体調を見たり、会話をしてコミュニケーションを取ることが必要なのは言うまでもありません。もし仕事の都合や、子どもの塾や習い事などで、食事の時間がまちまちだとしたら、あえて「みんなでお茶しよう」と集まる時間 を作ることが大切なのではないかと思います。
ティータイムで家族の健康を守りましょう
豊かな生活って何だろう? と、改めて考えてみました。家族の仲が良い、精神的にも経済的にもゆとりがある、趣味など日々の楽しみがあるのは、理想的です。
会話が弾む家庭があり、うれしいことや楽しいこと、つらいことがあったときに、すぐに気づいてもらえる。家族の健康を考えるお母さんがいて、夫や子どもが精神的につらそうなときには気持ちが安定するようなお茶を出してくれる。そういう環境があることが豊かさではないでしょうか。
心身ともに健康でなければ、経済的な豊かさは保てなくなります。病気にかかって医療費がかさんだり、働くことが難しくなれば収入が減少してしまいますし、最悪の場合、仕事が続けられなくなってしまうかもしれません。
しかし、たった1杯のお茶が、たった1回のティータイムが、家族の心や身体を救えるとしたら、素晴らしいと思いませんか。
お茶って、急須を使って茶葉から淹れると、本当に美味しくなります。70度くらいのお湯で淹れると甘味が出るし、朝や元気のないときは90度くらいの熱いお湯のほうがカテキンの成分がよく出るので、さわやかに活動できるようになります。今、ご自宅に煎茶があったら、熱湯と70度くらいに冷ましたお湯と、淹れて飲み比べてみてください。味の違いを実感していただけると思います。
紅茶だったら、ジャンピングといって茶葉にお湯をしっかり当たるように淹れることで、ポリフェノール成分がしっかり出ます。反対にハーブティーは、静かにお湯を注いだほうが雑味が減り、美味しくなるのです。相手の体調や時間帯によって、お茶の淹れ方や選び方を変えるだけで、心のこもったおもてなしになります。
もし自分で急須を使ってお茶を淹れたことがない方が、初めて急須を買うのなら、お茶の味がしっかり出るガラスか磁器のものをお勧めします。香りが付きにくく、いろんなお茶に対応できます。特にガラス製のものは、色も見えるので楽しいと思いますよ。
1日に1回くらいは家族と顔を合わせ、何を考えているのか、体調は大丈夫か、健康状態を確認するのもティータイムの役割だと思います。
最近は外食化が進み、食生活の乱れから、カロリーは十分でも必要なビタミンやミネラルが不足している方が増えています。それをハーブティーやお茶で補うことで、病気を防ぐことに繋がります。できるだけ自己免疫力を高めて、家族の健康を守ることもお茶の役割になればいいなと考えています。